270の差額
山本大輔さんは金物店を営んで十一年。帳簿は自分でつけていて、使い慣れた表計算ソフトの中身は頭に入っています。月末の最終日、借方の列を合計すると48,620。貸方の列は48,350。270足りませんが、どこが違うのかわかりません。
一週目の仕訳を見直し、二週目も見直します。夜十一時、二百件の取引を確かめても、差額は靴の中の小石のようにそのまま残っています。そのとき、何年も前に簿記の先生に教わったことを思い出しました。探す前に、まず差額で計算してみなさい。
試算表でわかること、わからないこと
試算表は、すべての借方残高の合計と、すべての貸方残高の合計を比べます。一致しなければ、必ずどこかに誤りがあります。けれども一致したからといって、誤りがないとは言い切れません。
| 試算表で見つかる誤り | 試算表では見つからない誤り |
|---|---|
| 借方と貸方の金額が一致しない仕訳 | 記帳されなかった仕訳 |
| 総勘定元帳に片側しか転記されなかった金額 | 二重に記帳された仕訳 |
| 計算の誤り | 正しい側だが誤った科目に入った金額 |
| 借方と貸方で違う数字が書かれた金額 | 両側に同じ誤った金額が入った仕訳 |
差額を見つける五つの手がかり
- もう一度合計する。 当たり前に聞こえますが、誤りは思っている以上に合計そのものにあります。
- 差額と同じ金額を探す。 差額と同じ金額は、多くの場合、一行の抜けです。借方だけあって貸方がない仕訳です。
- 2で割る。 ある金額を反対側に記入すると、差額はその金額の2倍になります。270なら135を探します。
- 9で割る。 差額が9で割り切れるなら、隣り合う数字の入れ違い(4,350を4,530と書くと差は180)か、桁のずれ(300を30と書くと差は270)を疑います。
- 前月と比べる。 いつもより大きく残高が動いた科目から調べるのが近道です。
大輔さんの誤り
大輔さんは270を2で割ります。135。どこにもありません。270を9で割ると、ちょうど30。そこで、300であるべき30、あるいは30であるべき300を探します。二分で見つかりました。300のねじの仕入が、借方の棚卸資産には300、貸方の現金には30と入力されていたのです。キーボードに残ったゼロ一つでした。
その夜、大輔さんは二つのことを学びました。一つは、目では何時間もかかることを、計算なら数分で見つけられること。もう一つは、この誤りはそもそも入り込むべきではなかったことです。借方300、貸方30の仕訳は貸借が合わず、複式簿記のシステムならその場ではじいていたはずです。
試算表では見えない誤り
翌月から、大輔さんは貸借の合わない仕訳をはじくシステムで帳簿をつけ、試算表はいつも一致するようになりました。それでも完璧とは限りません。合計を変えない誤りには、次の確認が役立ちます。
- 毎月、銀行残高を照合する:記帳漏れや二重記帳は、たいてい通帳や明細との差として現れます。
- 通常残高を確かめる:貸方残高の現金や、貸方残高の費用はありえず、記入した側か科目の誤りを示しています。
- 各科目を前年同月と比べ、大きな変化があればその理由を確かめる。
- 棚卸をして、帳簿の在庫と比べる。
こうして大輔さんは二つ目の誤りを見つけました。店の家賃1,000が、水道光熱費の科目に入っていたのです。試算表は一致していましたが、その月の電気代はまるで工場のようでした。
何も消さずに仕訳を訂正する方法
記録した仕訳は、削除も上書きもしません。借方と貸方を入れ替えた同じ仕訳、つまり取消仕訳で打ち消し、そのうえで正しい仕訳を記録します。三つの仕訳はすべて仕訳帳に残り、何が起きたのか誰でもたどることができます。
| 仕訳 | 借方 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 元の誤った仕訳 | 水道光熱費 | 現金 | 1,000 |
| 取消仕訳 | 現金 | 水道光熱費 | 1,000 |
| 正しい仕訳 | 地代家賃 | 現金 | 1,000 |
消してしまうほうが早かったでしょう。けれども消せる帳簿は、誰にも信頼されません。税理士にも、銀行にも、一年後のご自身にも。
Aconta Online の役割
Aconta Online は、借方と貸方が一致しない仕訳をすべてはじくので、270の差額はそもそも生まれません。記録した仕訳は決して書き換えず、取消仕訳で打ち消して両方を残し、それぞれの日付と入力した人も記録します。試算表は常に最新で、用語集では科目の種類ごとの通常残高を説明しているので、合わないところがひと目でわかります。最初の一社は無料で、カードの登録も不要です。
よくある質問
試算表の貸借が合わないのはなぜですか。
ほとんどの場合、借方と貸方が一致しない仕訳、総勘定元帳への片側だけの転記、合計の誤りのいずれかです。差額を2と9で割ると、探す範囲を絞れます。
差額が9で割り切れるのは何を意味しますか。
54を45と書くような数字の入れ違いか、300を30と書くような桁のずれの可能性が高いということです。どちらも差額が9の倍数になります。
誤った仕訳は削除してよいですか。
削除してはいけません。借方と貸方を入れ替えた取消仕訳を記録し、そのうえで正しい仕訳を記録して、経緯をすべて仕訳帳に残します。
試算表が一致すれば、帳簿は正しいのですか。
そうとは限りません。試算表は、記帳漏れ、二重記帳、誤った科目への記入を見つけられません。そのために銀行残高の照合、残高の確認、棚卸があります。
